「犬や猫は飼えないけれど、何か小さな家族をお迎えしたい」——そう思って、フクロモモンガにたどり着く方はとても多いです。手のひらにすっぽり収まる大きさ、くりっとした大きな目、ふわふわの被毛。可愛さは本物です。
でも、その可愛さだけでお迎えして、あとから戸惑ってしまう方も、実は少なくありません。僕は岡山でフクロモモンガのブリーダーをして6年になりますが、いちばん大切にしているのは「お迎えする前に、本来の姿を知ってもらうこと」です。
この記事では、これから初めてフクロモモンガを家族に迎える方に向けて、飼い方の基本と、6年向き合ってきたからこそお伝えしたい大事なポイントをまとめました。読み終わるころには、「自分の暮らしに迎えられそうか」が、きっと見えてくるはずです。
飼い方の前に、まず知ってほしい「3つの本当の姿」
準備するものの話に入る前に、どうしても先にお伝えしたいことがあります。フクロモモンガには、写真や昼間の見学だけでは見えにくい「本当の姿」が3つあります。ここを知っているかどうかで、お迎えしたあとの暮らしが大きく変わります。
① 夜行性 ── 元気いっぱいなのは夜
フクロモモンガは夜行性です。日中はポーチ(布の寝袋)の中でぐっすり眠っていて、活発に動き回るのは夕方から夜にかけて。昼間にお店で見た「おとなしくて可愛い姿」は、実は寝起きの姿だったりします。
夜になると走り回り、ジャンプし、ときには「キュッキュッ」「シューッ」といった声で鳴くこともあります。生活リズムが合うかどうかは、お迎え前にぜひ一度、夜の様子を見て確かめてほしいところです。

② 寂しがり屋 ── 仲間と関わる時間が必要
とても社会性の高い動物で、本来は仲間と身を寄せ合って暮らします。ひとりぼっちの時間が長すぎると強いストレスになり、自分の体をかじってしまう「自咬(じこう)」につながることもあります。多頭飼育がすすめられるのも、毎日のスキンシップが欠かせないのも、この「寂しがり屋」という性質があるからです。

③ 慣れるまで時間がかかる ── でも、必ず歩み寄れる
お迎えしたその日からベタ慣れ、ということはまずありません。慣れるまでの期間には個体差があって、数週間で打ち解ける子もいれば、数か月かかる子もいます。ここを知らずに「思っていたより懐かない」と焦ってしまうのが、いちばんもったいない失敗です。時間をかければ、必ず歩み寄れます。
基本のキ ── 飼い始めに必要な準備と環境
本来の姿がわかったところで、いよいよ準備するものを見ていきましょう。最初にそろえておきたいものは、次のとおりです。
- ケージ:上下に動き回るので、高さのあるものを
- 寝床(ポーチ):布製の寝袋。安心して眠れる「自分の場所」
- 食器・給水器:ごはん用とお水用
- 床材・ペットシーツ:掃除のしやすさで選ぶ
- 遊具・ステージ:運動不足の解消に
- ヒーター:温度管理の必需品
ケージは「広さ」より「高さ」
フクロモモンガは木から木へ滑空する動物なので、横の広さより上下の空間が大事です。目安として、1匹なら幅45cm×奥行45cm×高さ60cm以上がほしいところ。できれば高さ80cm以上あると、登ったり飛び移ったりする運動スペースに余裕が生まれます。金網製・ガラス製・アクリル製がありますが、保温のしやすさや掃除のしやすさで、ご自宅の環境に合うものを選んでください。
温度は25℃前後をキープ
これは本当に大事なので強くお伝えします。フクロモモンガが快適に過ごせるのは25℃前後。急に暑くなれば熱中症、寒くなれば低体温症になり、体調を崩します。エアコンと専用ヒーターを併用して、一年を通して温度を一定に保ってあげてください。特に真夏と真冬は、留守にする時間帯の室温まで気を配る必要があります。
ごはんは「ペレット主食+副菜」が基本
フクロモモンガは雑食です。野生では樹液や花の蜜、果実、昆虫などを食べています。飼育下では、栄養バランスのととのったペレットを主食にして、ゼリーや少量の果物、動物性たんぱくを副菜として組み合わせるのが基本になります。与えるタイミングは、夜行性に合わせて夕方が向いています。お水は毎日新しいものに替えてあげてください。ごはん代の目安は、月におよそ1,000〜5,000円ほどです。
逆に、与えてはいけないものもあります。チョコレートやカフェインを含むもの、玉ねぎ・ねぎ類、人間用に味つけされた食べ物は、フクロモモンガの体に害になります。「ちょっとくらいなら」という気持ちが事故につながるので、人の食べ物を分け与えるのは避けてください。何を与えていいか迷ったときは、お迎え先のブリーダーに気軽に聞いてしまうのがいちばん確実です。
6年向き合って学んだ、本当に大事なこと
ここからは、本やほかのサイトにはあまり書かれていない、僕自身が手を動かしてきた中で「これは伝えたい」と思ったことをお話しします。
「慣らし」は、半年かけてもいい
僕がこの仕事で大切にしている「慣らし」の原点になった子がいます。最初のころにお迎えした、プラチナの女の子。とても気が強くて、わがままで、最初はまったく手に乗ってくれませんでした。
そこで僕は、焦るのをやめました。最初の数週間は無理に触らず、まずは僕の匂いを覚えてもらうことから。ポーチごとそっと手のひらに乗せて、少しずつ触れ合う時間を増やしていきました。そうして半年ほどかけて、ようやくベタ慣れになってくれたんです。
あのとき腹をくくって時間をかけたことが、いまの僕の「慣らしてからお渡しする」という姿勢につながっています。だから、これからお迎えする方にも言いたいんです。慣れるまでの時間は、その子と信頼を築くための大切な時間。数週間で焦らないで、半年かかってもいいんだ、くらいの気持ちで向き合ってあげてください。

慣れにくい・噛んでしまうといった悩みについては、「懐かない?5つの原因と正しい接し方」の記事でも詳しくお話ししています。
「昼間しか見ない人」が、絶対に知らないこと
僕がお迎えのときに夜の見学を大切にしているのには、はっきりとした理由があります。フクロモモンガは昼間ぐっすり眠っているので、日中だけの見学では、これから何年も一緒に暮らすことになる「元気に動き回る夜の姿」が、ほとんど見えません。鳴き声も、走り回る勢いも、ほんのりとした匂いも——本当に知っておいてほしいのは、むしろ夜のほうなんです。
だからこそ僕は、夜の活動の様子を実際に見てから、お迎えを決めてほしいと考えています。夜のリアルな姿まで見ていただくと、「想像と違った」というミスマッチがぐっと減り、お互いに後悔のないお迎えにつながります。実際に夜の姿を見たお客様から「本当の姿が見られてよかった」と言っていただけることも多く、夜の姿まで見て納得したうえで迎えていただくことを、ももラボはこれからも大事にしていきます。

ごはんの「好き嫌い」は、想像以上に激しい
意外と知られていないのが、フクロモモンガのごはんの好き嫌いの激しさです。同じフードでも、よく食べる子と、まったく口をつけない子がいます。「これを買えば大丈夫」という万能の正解はなく、その子に合うものを根気よく探してあげる必要があります。
この「食べてくれない」という悩みに応えたくて、ももラボでは飼育の現場で試行錯誤を重ねて生まれたオリジナルフード「ペロメシ」を手づくりしています。食いつきと栄養バランスにこだわって作ってきたもので、このたび、日々のごはんに頭を悩ませている飼い主さんに向けて、販売を始めることにしました。「うちの子がなかなか食べてくれない」という方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

ごはんのお悩み、ひとりで抱えないでください
「ペロメシが気になる」「うちの子がなかなか食べてくれない」——そんなときは、公式LINEからお気軽にご相談ください。6年向き合ってきた経験から、その子に合った食事をいっしょに考えます。
初めての方がつまずきやすい「失敗ポイント」
最後に、これまで多くの飼い主さんのご相談に乗ってきた中で、特に多い「つまずき」をまとめておきます。先に知っておけば、防げるものばかりです。
温度管理の油断
くり返しになりますが、温度のワンミスは命に関わります。「少しくらい大丈夫だろう」と留守中の冷暖房を切ってしまったり、夏場の閉め切った部屋に置いてしまったり——こうした油断が、いちばん怖い失敗です。旅行などで長く家を空けるときは、温度管理とお世話をお願いできる人をあらかじめ決めておきましょう。
ひとりぼっちにしてしまう
寂しがり屋という性質を知らずに、かまう時間が取れないまま単独でお迎えしてしまうと、ストレスから体調を崩すことがあります。お迎え前に、毎日スキンシップの時間が取れるか、多頭でのお迎えも検討できるか、ぜひ一度考えてみてください。
「におい」で手放してしまう
男の子は性成熟を迎えると、額や胸の臭腺が発達して匂いが強くなります。これを知らずにお迎えして、「思ったより匂う」と戸惑ってしまう方もいます。こまめな掃除や、その子に合った対応で付き合っていけるものなので、これも事前に知っておいてほしいポイントです。
なつくまで待てずに諦めてしまう
先ほどお伝えしたとおり、慣れるまでの時間は個体差が大きいです。「数日経っても懐かない」と焦って距離を置いてしまうと、かえって信頼関係が遠のきます。じっくり、その子のペースに合わせてあげてください。
診てくれる病院を確保していない
フクロモモンガを診察してくれる動物病院は、犬や猫ほど多くありません。いざというときに慌てないよう、お迎え前に通える範囲の病院を調べておくと安心です。
まとめ ── 可愛さの先にある「大変さ」も、一緒に
フクロモモンガの寿命は、飼育環境がととのえば、いまではおよそ8〜10年といわれます。お迎えするということは、その年月をまるごと一緒に過ごすということ。だからこそ、勢いだけでなく「最後まで向き合えるか」を、一度立ち止まって考えてほしいのです。
フクロモモンガは、見た目の可愛さだけでなく、夜行性であること、寂しがり屋であること、慣れるまで時間がかかること——飼ってみて初めてわかる「大変さ」も、たくさんある動物です。
でも、その一つひとつに向き合っていけば、これ以上ないほど愛おしいパートナーになってくれます。僕がいちばん減らしたいのは、可愛さだけでお迎えして後悔してしまう方。だからこそ、本来の姿を知ったうえで「それでも一緒に暮らしたい」と思える方に、お迎えしてほしいと願っています。
ももラボでは、慣らした状態でお渡しすること、夜の本当の姿を見ていただくこと、お迎えのあとも爪切りや飼育のご相談で里帰りしていただけることを大切にしています。「自分にも飼えるかな」「この子のことで相談したい」——そんなときは、どうぞ気軽に声をかけてください。
お迎えを具体的に考え始めた方は、「初心者に向いている?向く人・向かない人」や、「後悔しないブリーダーの選び方」もあわせて読んでみてください。
「自分にも飼えるかな」と思ったら
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